【TOB】意見表明報告書 ダイセキ環境ソリューション 2025.10

2025年10月公表 ダイセキ環境ソリューション
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本件は、2025/10/3に開示された、ダイセキ環境ソリューションの、親子上場を解消を目的とした株式会社ダイセキによるTOBに対しての意見表明報告書について、解説をしていきます。

また、本件は2025/10/3同日に公表され、ダイセキ環境ソリューションの親会社のダイセキによるダイセキ環境ソリューション株式の公開買付についてのものです。
ダイセキによる公開買付説明書については、別途下記の記事を御覧ください。

ダイセキによる公開買付説明書についての解説はこちらをクリック

意見表明報告書とは

本意見表明報告書とは、上場企業が株式公開買付(TOB)を受けた際に、取締役会として、その公開買付に賛同するか・反対するか・中立かを公表するための書類です。

本件では、株式会社ダイセキ環境ソリューションが親会社である株式会社ダイセキによるTOBに対して発行したものです。
上場子会社としての立場から
「賛同意見を表明し、株主に応募を推奨」
する内容が示されています。

本件のように親子上場解消という性質上、利益相反の可能性が高いため
どのようにして公正性が確保されたのかが主な焦点となります。

ダイセキによる完全子会社化の目的

意見表明報告書では、ダイセキがTOBを実施する目的として、
「グループ経営の最適化と意思決定の迅速化」を挙げています。

ダイセキ環境ソリューションはダイセキグループの中核会社として土壌汚染やリサイクル事業を担ってきましたが、親子上場により下記の課題が存在していました。

  • 親子間取引の公正性の確保に伴うコストと手続き負担
  • 事業領域の重複によるグループ最適化の制約
  • 上場維持に伴う管理・開示コストの増加

これらを踏まえ、親子上場の解消と経営資源の一体運用を目的として完全子会社化が検討されたと推測できます。

取締役会の検討体制と特別委員会の設置

本件親子上場解消を目的としたTOBの最大の焦点は、公正性確保のためのガバナンス体制です。
対象会社である、株式会社ダイセキ環境ソリューションは、TOB提案を受けた段階で即座に下記メンバーによる特別委員会を設置しました。

  • 花村美晴氏(公認会計士)
  • 堀部隆司氏(東伸サービス顧問)
  • 小林啓介氏(株式会社ヤガミ代取社長)

また、法務税務のアドバイザリー体制もそれぞれ下記の通り整備をして公正性確保に努めています。

  • 法務アドバイザリー:森・濱田松本法律事務所
  • 財務アドバイザリー/価格算定機関:プルータス・コンサルティング

この体制により、対象会社が親会社の影響を受けずに、判断できる環境であったことが報告書にて強調されています。

取締役会の判断と賛同理由

前掲した、ダイセキによる公開買付報告書にて、ダイセキとダイセキ環境ソリューションの主に、買付価格の交渉にもあったように、ダイセキによる複数回の価格提示とそれに対する特別委員会の再検討の要請により、最終的にダイセキ環境ソリューションの特別委員会が妥当と判断する価格である1,850円に落ち着きました。

また、ダイセキ環境ソリューションの取締役会は、
特別委員会の答申を全面的に尊重し、全会一致で下記決議を実施しました。

  • 公開買付に賛同すること
  • 株主に対して応募を推奨すること

賛同理由としては下記を挙げています。

  • 経営環境の変化に対応するためのグループ一体経営の必要性
  • 少数株主にとっても公正な価格水準
  • 将来的な企業価値向上

特に少数株主の利益への配慮を明確に言及しており、
取締役会の意思決定が一方的な親会社主導の結果ではないと強調されています。

今後のスケジュール

意見表明報告書では、TOB成立後の手続きも具体的に記載されています。
また、これは当然公開買付説明書にも記載されております。

  • 公開買付期間:2025/10/3~2025/11中旬(予定)
  • TOB成立後:株式併合によるスクイーズアウトの実施
  • 完全子会社化後:上場廃止予定

このスキームにより、ダイセキが100%株式を所有し、
グループ全体の資本・事業戦略を一体的に運営できる体制が完成します。

まとめ:少数株主保護とグループ再編のモデルケース

ダイセキ環境ソリューションの意見表明報告書では、
親子上場解消型TOBにおけるガバナンスと構成性確保の手続きを丁寧に実施をしたケースです。

  • 独立特別委員会の設置
  • 第三者価格算定機関の活用
  • 複数回の価格交渉
  • 取締役会の全会一致の賛同

これらの要素を通じて、少数株主保護とグループ経営最適化のバランスが取れた案件の出だしとなったと言えるでしょう。

親子上場は日本の資本市場特有の課題とされてきました。
本件のように独立した第三者委員会の設置と十分すぎるほどの価格交渉プロセスを経た親子上場解消型TOBは今後の上場企業のグループガバナンスのスタンダードとなる可能性もあるでしょう。

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