本件全体感
2025年10月16日、株式会社OICグループ(旧ロピア・ホールディングス)は、株式会社スーパーバリューに対する公開買付(TOB)を開始した。本件は、OICグループが既に65.24%を保有するスーパーバリューを完全子会社化し、上場廃止を目的とする非公開化案件である。
取引の背景には、スーパーバリューの業績低迷と上場維持基準(流通株式比率)未達による上場廃止リスクがあり、OICグループが経営・財務両面から支援を強化する狙いが見える。
両社アドバイザリー等の選任
買付者(OICグループ)側:主導的にスキーム策定を行い、資金はすべて自己資金で賄う方針。FA・法律顧問の記載はなし。
対象者(スーパーバリュー)側:特別委員会を設置し、利害関係を有しない取締役4名が審議・決議に参加。外部専門家を交え、価格交渉を3度にわたり実施。
対象者取締役会は最終的に賛同意見を表明し、株主に応募を推奨。
スーパーバリューの事業と非公開化の意図
事業概況
スーパーバリューは、埼玉・東京・千葉を中心に26店舗を展開する食品スーパー・ホームセンター複合業態。1996年設立、2008年JASDAQ上場を経て東証スタンダード市場に上場。
業界環境
コロナ後の需要変化・人件費上昇・光熱費負担増により、小売業界は低価格競争が激化。消費者の節約志向が強まり、収益性確保が困難に。
非公開化の意図
2023年以降、上場維持基準(流通株式比率25%)に継続不適合。
加えて、業績悪化により資金調達余力が低下。OICグループとの連携強化には、上場維持制約のない体制での経営統合が必要と判断された。
TOB価格の妥当性
公開買付価格:781円
公表日前営業日終値:641円(+21.83%プレミアム)
過去1ヶ月平均:646円(+20.87%)
過去3ヶ月平均:676円(+15.56%)
過去6ヶ月平均:741円(+5.40%)
→ 市場水準に対して一定のプレミアムを付与。PBR約4.7倍と高水準であり、妥当性を説明。
必要資金と調達方法
買付資金はすべてOICグループの自己資金により充当予定。
金融機関からの借入や外部調達は行わず、既存キャッシュポジションを活用。
まとめ
本件TOBは、OICグループによるグループ戦略の一環としての非公開化案件であり、対象企業の経営再建とエリア拡大を両立させる狙いがある。
スーパーバリューにとっては、上場維持リスクと財務制約を解消し、親会社の支援のもとで経営改善を加速できる意義が大きい。
一方で、TOB価格は市場プレミアム水準の範囲にとどまり、少数株主の評価との乖離には注視が必要である。


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