はじめに
2025年10月16日、株式会社スーパーバリューは、親会社である株式会社OICグループによる公開買付け(TOB)に関して賛同意見を表明し、株主および新株予約権者に対して応募を推奨する旨を発表した。
本件は、OICグループがスーパーバリューを完全子会社化し、上場廃止を目的とする非公開化を進めるものである。
本件TOBの概要
- 買付者:株式会社OICグループ(川崎市幸区)
- 対象証券:スーパーバリュー普通株式及び、第1回・第2回新株予約権
- 買付価格:普通株式1株あたり781円
- 新株予約権:行使価額との差額 x 300株分で算定
- 買付予定数の上下限:いずれも設定なし(応募株式はすべて買付対象)
- 目的:完全子会社化による非公開化(親子上場解消)
スーパーバリューの取締役判断
2025.10.16開催の取締役において、利害関係をゆしない取締役全員の賛成および監査役全員の異議なしの下で、下記を決定。
- TOBへの賛同意見の表明
- 株主に対する応募推奨の決議
取締役会では、TOB価格の妥当性や少数株主の保護の観点から特別委員会による審議結果をふまえて慎重に判断。
買付者OICグループとスーパーバリューの関係
OICグループ(旧ロピア・ホールディングス)は、食品スーパーロピアを中心に全国132店舗を展開する企業グループであり、グループ売上高は5,200億円(2025/2期)。
スーパーバリューとは2022年に資本業務提携を締結し、以降2度の第三者割当増資により発行済株式の約65%を保有する親会社となっている。
同社の経営支援・店舗改装などを実施する中、業績改善の遅れと財務基盤の弱体化を踏まえ、本件完全子会社化を決断した経緯。
賛同する意見表明の背景
スーパーバリュー取締役会は次の観点からTOBへの賛同を決定した。
上場維持リスクへの対応
スーパーバリューは2023年以降、東証スタンダード市場の流通株式比率25%基準を満たせず、2026年2月末までに適合しなければ上場廃止となる見込みだった。
2025年時点でも改善計画の進捗が限定的であり、自主的な上場維持は困難と判断された。
業績・財務基盤の問題
2025年2月期の営業損失は27億円に達し、自己資本比率は9.5%と低水準。
資金調達余力が限定的で、金融機関からの新規借入も困難な状況。
親会社の支援を迅速に受けるためにも上場廃止による経営統合が必要とされた。
非公開化のメリット
- グループ内部の人材交流・ノウハウ共有による経営効率化
- 財務支援の迅速化(増資・親子ローン)
- 上場維持コストや規制からの開放
- 取引先との信用補完による安定化
これらのメリットが、非公開化による社会的信用低下の可能性などのデメリットを上回ると判断。
交渉経緯と価格決定
OICグループからの提案価格は当初633円であったが、特別委員会・取締役会による再三の協議を経て781円まで引き上げられた。
この価格は以下のプレミアムを含む:
- 前営業日終値比:+20.3%
- 過去3ヶ月平均株価比:+17.4%
特別委員会は、少数株主保護の観点から「相応のプレミアムを含む妥当な水準」と評価し、取締役会もこれを追認した。
TOB成立後のスキーム
TOB後に全株式を取得できない場合は、株式併合によるスクイーズアウトを予定。
これによりOICグループが100%保有し、スーパーバリューは上場廃止となる。
買付資金はOICグループの自己資金により充当される予定。
まとめと考察
スーパーバリュー取締役会は、継続的な赤字と上場廃止リスクを踏まえ、OICグループとの完全統合による再建を選択した。
TOB価格は市場水準に対して一定のプレミアムを有し、形式・実質の両面で少数株主への配慮がなされた案件と評価できる。
今後は、OICグループ傘下での再建スピードと、スーパーバリューのブランド維持が焦点となる。


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